東京小金井市で今年の5月、大学生の冨田真由さんがファンの男に刃物で刺されて一時重体になった事件がありました。
冨田さんは事件の約2週間後に意識を取り戻し、その後退院されています。
事件が起きた当初はよく報道されていました。
その後あまり報道されていなかったので、冨田さんのことが気になってはいました。
気にはなっていたけど、あんな大変な思いをされたのでマスコミはほっておいてあげてほしいなとも思っていました。
そんな彼女が手記を発表したんです。
冨田真由さんの手記
犯人からのSNSへの書き込みが始まったのは平成26年の6月からでした。
特に不安や恐怖を大きく感じるようになったのは、ライブ終了後にストーカー行為をされたことや、生き死にに関する書き込みが1日に何件もくるようになったことがきっかけです。
初めは、気にしないでいようと踏ん張っていましたが、どんどん不安や恐怖が積み重なり、その重さに限界を感じていました。そんな気持ちから家族や友人に相談しましたが、犯人が急に目の前に現れて殺されそうになったとしても、私も家族も周りの人も素人なので、自分のことや誰かを守る方法は何も知りません。
そんな中でも希望を持っていたのが、警察に助けを求めることでした。家族や友人は、命より大切なものはないよと、身の危険を感じていることや助けてほしいということを警察に伝えた方が良いと背中を押してくれました。私も、この不安や恐怖を解消するための一番良い方法だと思いました。
警察には、命の危険を感じていることがわかる資料をいくつも持っていきました。男女2人の生活安全課の方が対応をしてくれて、主に女性が話を聞いてくれました。平成26年の6月からSNSへの書き込みが始まったこと、生き死にに関する書き込みが頻繁にあること、友人のSNSにも迷惑な書き込みがされていること、ライブ終了後にストーカー行為をされ命の危険を感じていたことを、持っていった資料を見ながら、特に危険だと感じていたものに関してはひとつひとつ説明をし、「殺されるかもしれない」と不安や恐怖を訴えました。資料が多かったため、後でゆっくり読ませてもらうと女性の方に言われましたが、ストーカー行為をされたことに関しては、そのときの状況を何度も説明すると、頷きながら聞かれていたので、理解してくれたのだと思っていました。
相談にいったときに伝え忘れたことはひとつもありません。
警察からは、「使っているSNSから犯人のアカウントをブロックしてください」「何かあればこちらから連絡します」と言われました。その後相談から事件までの間に、担当者から3回ほど電話がかかってきましたが、私のことを聞かれたのはそのうち1回だけでした。
事件後、私が相談に行ったときのことについては、平成28年11月28日と12月2日の2回にわたって、警察から事情聴取を受けました。
警察からの聴取の際、挨拶が終わった後の最初の言葉が「本当に殺されるかもしれないと言ったんですか」でした。その後も、私が「殺されるかもしれないという言葉を言っていないのではないかと何度も聞かれました。
でも、「殺されるかもしれない」という言葉を、私は絶対に伝えました。母も、警察に何度も訴えてくれました。これだけは間違いありません。この事実を警察が認めないことに、怒りを通り越して、悲しみを感じています。
必死に訴えたことが全く伝わらなかった。感じるものに温度差があったとしても、警察に持っていった多くの資料があり、殺されるかもしれないと何度も伝えたにもかかわらず、危険性がないと判断されたのは今でも理解できません。
今思うと、相談した際に、女性の警察官がほとんどメモを取らずに話を聞いていたことや、男性の警察官が「他の事件が忙しい」と言い何度も部屋を出入りしていたことから、私の相談を軽い気持ちで聞いていたのだと思います。
私が言ったことをどのように受け取ったのか、相談した担当者に直接話を聞かせてほしいと何度もお願いしてきましたが、組織として対応していますと、一切取り合ってもらえませんでした。
長い手記で、直筆で書かれた文字はとても綺麗でした。
きっと思い出すのも嫌だったと思うのに、細かく書かれています。
彼女の思いが伝わってきました。
生き死にに関する書き込みが1日に何件も・・・
ストーカにあった上にそんな書き込みがきたら誰だって怖いはず。
アイドル活動をされていたから、きっと最初はファンに対しての対応を取っていたんでしょうね。
「そんな目にあったなら表舞台に立つのをやめればよかったのに」
って声もありますが、それでも夢に向かって進みたかったから警察に頼ったんだと思います。
警察に言えば一安心だって、普通の人なら思ってしまいます。
いつも起きた後に騒がれる
中には大事にならずに防げたストーカー事件もあったんだと思います。
それは報道されてないだけで。
でも怖い目にあってる人からすれば、すがる思いで相談に行ってるんだから助けてほしいのは当たり前。
それなのに真剣に取り合ってくれなかったらどうしたらいいの。
事件があって体にも心にも傷を負ってる人に、
「本当に殺されるかもしれないと言ったんですか」
ってなんで言えるの。
そこが問題なの?
それを事件後に話してどうなるの?
理解できないですよね。
桶川ストーカー殺人事件
近年ストーカによる事件がとても増えています。
1999年に桶川のストーカー殺人事件がありました。
この事件があってから、ストーカー規制法が創設されました。
もう17年前の話です。
でも警察ってこの頃から全然変わってないんですね。
4歳の娘に
ストーカーとは違うんですが、今年怖い目にあいました。
数か月経ちますが、いまだに娘は怖がっています。
そんな時、
「おまわりさんに言ったからもう大丈夫だよ。」
って娘には安心させてきました。
これからはそんな風には言えなくなっちゃったなぁ。
娘も、
「おまわりさんがいるからだいじょうぶだよね?」
って確認してくるのに。
冨田さんは手記の最後にこう綴っています。
この事件をきっかけに、同じ不安や恐怖を抱えて苦しんでいる人が、安心できるような社会に変わっていってくれたら嬉しいです。
この文章で、少しでも私の気持ちが伝わりますように。
冨田さんの願いが届くといいんだけど・・・。
追記
最初手記を全文載せていました。
全文載せるのは良くないのではないかとご指摘を頂いたので、事件について書かれている部分を抜粋させていただきました。